今や災害対応におけるドローンの有効性は多くの人に認知されています。火災、山岳救助、風水害、行方不明者捜索など様々な場面でドローンは使用されています。
当スクールはドローンの運用支援や訓練を通して消防本部や消防隊員の方々に関わってきましたが、その中でよく耳にするのは「誰をドローン任務に充てるのか」という組織上の問題です。今回のコラムではこの問題について皆さんと一緒に考えたいと思います。新たな技術であるドローンを限られた人員の中でどのように運用していけば良いのでしょうか。今回はその前編として、消防が抱える課題や現状についてご紹介します。
既存の部隊編成
消防庁の「消防職員の部隊編成と階級について」では、警防規定の例として消防職員の部隊編成についての記載があります。内容については下記の図をご覧ください。

消防隊5名、救急隊3名、はしご隊4名、救助隊5名、指揮隊3名という構成になっており、各隊員に役割が充てられています。これは全国一律の法定編成ではありませんが、少なくともこの編成例ではドローンを専任する役割はありません。
とある消防署では警防課などの日勤職員が後方支援車両で出動することによりドローン任務を担っていましたが、夜間や休日の即対応体制をどう確保するのかという課題は残されたままです。
既存の消防力を低下させずに、新たな機能をどう組み込むのかが大きな壁となっています。
人員不足
少子高齢化が進み日本の総人口が減少を続ける中、自然災害は激甚化・頻繁化しています。この人員不足と任務の激化の影響により、消防や救急体制への負担は増加しています。
人員不足の改善に向けたポイントとして挙げられるのが、外国人の雇用と女性の積極的な雇用です。多くの消防本部では受験資格の一つとして日本国籍という項目が設けられており、大きな制限となっています。これに加え、より大きな障壁となっているのが女性の雇用です。以下の図をご覧ください。


平成27年に公表された「消防本部における女性職員の更なる活躍に向けた検討会報告書」によると、女性消防吏員の数は全国で3,875人と全消防吏員のわずか2.4%でした。さらに、女性消防吏員が一人もいない消防本部は288本部あり、これは全体の約4割を上回る結果となりました。
一方、令和7年に公表された「消防白書」によると女性消防吏員の数は6,386人となっており全消防吏員に占める割合は3.8%でした。また、女性消防吏員がいない消防本部は69本部となっており、全体的に改善の傾向が見られました。しかし、同白書が示す警察官12.0%、自衛官9.1%、海上保安庁9.9%という割合と比べると、消防の女性比率は依然として低いことがわかります。
こうした女性消防吏員が少ない理由の一つには体力の限界があります。過酷な環境の中で職務を最後まで全うできる自信が無く、志望を断念してしまう女性が少なくありません。
人員不足の課題点
これらの問題が問題視されている中で、消防が改善すべきだと考えられるのが以下の2項目です。
・性別や人種・年齢を問わない全ての人が消防吏員として勤務を継続できる職場環境
→適材適所の配置、勤務制度や資機材の改善、公歴職員の活動維持
・力仕事の代表例としての世間から認識
→人の命を救いたいという意志を持つ人が、体力の制限・限界という理由だけで諦めてしまう
消防職員の鍛錬やその使命感は消防活動を大きく支えてきました。ですが、このままでは組織として消防を存続させることは難しいと考えられます。「若く、体力があり、交替勤務に対応できる日本人男性」に限定して依存し続けている現状を改善しなくてはなりません。特に、災害が大規模化し激化している近年では、個人の力に依存しない仕組みが必要とです。
解決に向けて
こうした問題を抱えながら、新たな技術であるドローンをどのように運用していくのでしょうか。後編のコラムではこうした課題を抱えながらドローンを運用していくにはどうすべきか、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。後編のコラムもぜひご覧ください。
