緊急用務空域について

緊急用務空域をご存じでしょうか?

まず、緊急用務空域とは、警察や消防活動などの緊急用務を行うための航空機の飛行が想定される場合に、無人航空機の飛行を原則禁止する空域のことです。この空域は国土交通省のホームページやX(旧Twitter)で公示されます。空港周辺の空域、地表または水面から150m以上の高さの空域、または人口集中地区の上空の飛行許可があっても、緊急用務空域を飛行させることはできません。

(引用:国土交通省HP)

説明会に来られた方で、運用目的を確認した際に「災害が起こった時に物資を運搬したい」とおっしゃる方が稀にいらっしゃいます。もちろん、良いことをしたいという気持ちは理解できますが、ドローンを所有しているからといって、すぐに飛行させることは危険です。

災害時にドローンで物資を運搬するには、安全性を確保し、プライバシーを尊重することが必要です。また、関連法規を遵守し、地域住民との協力体制を構築することも重要です。

災害時にドローンで物資を運搬するために必要なことは次のとおりです。

  • 飛行ルートの事前準備とシミュレーション
  • 操縦者の訓練と確保
  • 地域住民への事前説明
  • 機体の整備点検
  • 許可申請やルール遵守
  • 十分な着陸スペースの確保
  • 積載物が落下しないようにする
  • 着陸時の風の影響を考慮する
  • 周囲に人や障害物がないことを確認する

また、災害時には強風や悪天候の中を飛行しなければならない可能性があるため、高度な操縦スキルが求められます。ドローンは、災害時の被害状況の把握や被災者の発見、安全なルートの確認など、さまざまな場面で活用できます。

今回のテーマである『緊急用務空域』は、関連法規の遵守、許可申請やルール遵守の部分に当てはまります。ドローンを飛行させる直前に、飛行ルートや空域で緊急用務空域の発令がされていないか確認することは、ドローンに携わる方なら知っておかなければならないルールです。確認の方法は、国土交通省のホームページに掲載されていますので、これからドローンに携わる方は必ず覚えておいてください。もし飛行させている周辺で山火事が発生した場合は、速やかに飛行を中止し着陸させ、その場から離れてください。間違っても火災状況をドローンで確認撮影しないようにしてください。

災害時にドローンを運用する場合、都道府県警察や国・地方公共団体、またはこれらから依頼された者が、事故や災害時の対応としてドローンを利用することができます。この際、事前に関係各所に確認し、協定を結ぶなどの手続きを必ず行う必要があります。これにより、航空法で定められている禁止内容を申請なしで実施することが可能となります。

2024年1月に発生した能登半島地震の際にも、広範囲で緊急用務空域が発令されていました。海外のメディアクルーが手続きなしでドローンを飛ばしてしまう事態も発生しています。国によって飛行ルールに違いがあるため、海外旅行の際にドローンを飛行させたい場合は、事前にルールを調べてから飛行させるようにしましょう。日本だけでなく海外でも同様の事態が発生し問題視されているケースもあります。緊急用務空域だけでなく、飛行させるための航空法が定められているので必ず遵守しましょう。

年々、一般販売されているドローンの飛行性能や撮影機能が向上し、練習すればプロ顔負けの映像を収めることができるようになってきました。小型化されたドローンは持ち運びもしやすく、価格帯も比較的お求めやすくなっています。その一方で、ドローンによる事故や報道が多くなってきている事実もあります。法規則がある以上、「知らなかった」では済まされません。現状ライセンスがなくても飛行可能なドローンですが、ライセンスを取得していなければ飛行させることができない時代が訪れるかもしれません。私個人の思いとしては、自動車と同じように免許を取得していなければドローンの飛行ができないルールを定めて欲しいです。車でさえも免許を取得していても事故が発生します。車とドローンでは普及率が天と地ほどの差がありますが、オモチャ感覚で気軽に手にすることができてしまい、法規則も同時に隣り合わせとなり罰則が科せられる可能性があります。後悔してもやりきれない辛いことですよね。そういった結果を招かないためにドローンスクールが存在しています。正しい操作方法はもちろん、法規則、メンテナンスといった知識を最低限身に付けておく必要があります。ドローンは、無人航空機と言われるように、旅客機と同じく航空機になります。規則を守り、正しく楽しくドローンを飛行させましょう。

最後に、緊急用務空域と違った内容も多くなってしまいましたが、とても重要なことなので触れさせて頂きました。緊急用務空域が発令されている場合、捜索や人命救助に関わることも多いため、軽視することができません。詳細は控えますが、「それ、あきませんやん!!」と言ったことも説明会時に聞いたことがあります。ルールが変わりよく分からないし怖くなったから飛行させていない、くらいの方が良いです。「分からないけど大丈夫でしょ!」の気持ちで飛行させてしまうことが一番怖いです。マイルールで行動してしまうと大変なことになります。航空法など法規則は理解するのではなく、知っておく、覚えておく必要があります。厳しいかもしれませんが、規則が出来上がる過程として、過去の事例や想定される問題を回避し、人々を守っていくために定められています。それだけではありませんが、もし何かあった時に「理解していなかった」と言い訳をしたら、「理解するより覚えてください」と言われてしまいます。赤信号では停止するルールがあるのと同じです。航空法は、日常生活では馴染みの薄い部分になると思いますが、ドローンに携わる、ドローンを手にした段階から密接な関係になることを肝に銘じましょう。


川崎 雅幸(かわさき まさゆき)

二等無人航空機操縦士
ドローン導入アドバイザー

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